Akiko Nakayama|Sep 24, 2020|サブスク・メディアビジネス解説
こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内20社・50メディアにサービスをご提供しています。
今回のnoteでは、デジタルメディアにおける多彩なマネタイズの方法をご紹介します。
広告・サブスク依存は危険。マネタイズの柱を複数持とう
「出版不況」といわれる昨今、パブリッシャーは紙面だけに頼るビジネスモデルからの転換を迫られており、デジタルでいかに売上を生み出すか(=マネタイズ)を模索しています。
国内のデジタルメディアの多くは、主要なマネタイズ手段としてアドネットワークによる広告掲載や、自社の広告商品の販売が行われています。しかしながら、昨今のパンデミックによる景気後退を受け、広告売上は全世界的に低迷しています。世界最大の新聞社である「New York Times」でさえも、広告事業の売上が半減することを見込んでいます。
また、近年注目を集めている記事コンテンツのサブスクリプション(=有料定期購読)も、導入してすぐ莫大な売上につながるわけではありません。デジタルメディアを安定して収益化するためには、特定の手段に依存せず、マネタイズの柱をいくつも育てることが重要です。
「広告」「記事のサブスク」以外に、どんな収益軸があるのでしょうか?
この記事では以下の5つのジャンル別に、マネタイズの方法を成功事例とともにお伝えします。
1.コンテンツの収益化
「コンテンツの販売=サブスクリプション」とイメージする方も多いかもしれませんが、コンテンツを収益化する方法は記事コンテンツの定期購読だけに限りません。
記事以外のコンテンツで読者との接点をつくる方法もあります。
海外で成功例が出始めているのが、動画・音声コンテンツです。「The Guardian」や「CNBC」は、自社のYouTubeチャンネルで10分を超える長尺の番組を配信しており、チャンネル登録者は100万人を突破、広告収入も見込めます。とはいえ、プラットフォーマーからの広告価格は下落傾向にあるとの報道もあります。これから動画・音声への参入を検討する場合は「どこで配信するか」もますます大切な視点になります。
ニュースレター(メルマガ)は、動画・音声に比べて低コストで取り組めるのがメリットです。多くのパブリッシャーでは記事の有料購読の「おまけ」的に扱われがちですが、大きなポテンシャルを秘めています。ニュースレターを主軸にしたサブスクリプションを提供している「Quartz」の存在はさることながら、米国ではニュースレターの有料購読に特化したプラットフォーム「Substack」が急成長しています。
専門性の高い情報を扱っていたり、有識者のネットワークを持っていたりするメディアならば、教育やビジネスに特化したコンテンツにニーズがあるかもしれません。
例えば米国のニュースサイト「ZDnet」は、様々なテーマのe-ラーニングコンテンツを販売しています。「Financial Times」が有料購読者向けに提供している教育コンテンツ「FT Secondary School」は、学生向けにコンテンツを無料開放することで若年層へのブランディングにも成功しています。
「The Economis」や「Business Insider(米国版)」のように、調査レポートの販売やコンサルティングなどで法人向けの収益化に取り組んでいる事例もあります。
2.コマース、アフィリエイト
メディアが持つ影響力や目利きへの信頼感を活かし、物販によるマネタイズを行う事例です。
・ライセンス提供 ・Eコマース ・クラウドファンディング ・商品掲載によるアフィリエイト収入
米「Buzzfeed」はフードブランドのTasty(テイスティ)を中心に製品へのライセンス提供で収益を生んでいます。2019年度にはBuzzFeedブランド商品の小売店売上が2億6000万ドル(約286億円)にものぼると報じられています。
日本版「Lifehacker」や「GIZMODO」を運営するメディアジーンは、クラウドファンディングサイト「Machi-ya」を運営しています。同社はアフィリエイトにも力を入れており、2019年7月の「Amazonプライムデー」では、記事を通じて数億円の売上と数万件の注文件数を達成しています。
3.オンラインイベント
パンデミックの影響でリアルイベントが大打撃を受けるなか、多くのパブリッシャーがオンラインイベントでいかに収益を生むか模索しています。一口にイベント開催といっても、収益化の手段は多岐にわたります。
・有料参加チケット ・スポンサー獲得 ・リードジェネレーション(参加者リストの販売) ・コマースとの連携・投げ銭
米国のテクノロジー系メディア「VentureBeat」は、主催イベントをオンライン化。会場費などの原価を抑えられただけでなく、引き続き多くの参加者とスポンサーを集めることに成功し、リアルイベントの時よりも高い収益を得られたといいます。
4.コミュニティ
メディアのネットワークや集客力を活かしてコミュニティをつくり、収益化する手段もありえます。
「NewsPicks」は、読者のコミュニティ化に成功した国内メディアの好例です。コメント機能やプロピッカー制度に始まり、2017年に「NewsPicksアカデミア」でコミュニティを強化。2020年には経済領域に特化した人材マッチングのプラットフォーム「NewsPicks Expert」を発足しました。メディアが持つ専門家のネットワークや集客機能を活用し、ビジネス領域を広げています。
また、地域密着のスモールコミュニティを収益化している例もあります。米国のメディア「Patch」は、事故・事件や店舗の開店など、大手メディアが扱わない地元密着の情報を扱っています。収益源は広告が主体ですが、広告主は中小企業や個人が中心とみられます。結果としてユーザー数は3200万人、推定年商は21億円を超えているといいます。ハイパーローカルメディアの可能性を感じさせる事例でしょう。
5.寄付、サポートプログラム
メディアに共感している読者に対し、任意での寄付や月額・年額のサポートプログラムへの加入を求める手法です。世界的な代表例は、動画の事例でも紹介した英国の「The Guardian」です。定期的に財政支援を提供する人は65万5000人に達し、過去1年に一度でも支援した人は約30万人にのぼることが明らかになっています。
日本ではnoteに記事単位の「サポート」機能があるほか、NPO法人が運営する非営利メディア「soar」がサポート会員を募っています。今後はクラウドファンディングによる資金調達も含め、国内でも寄付やサポートの可能性も高まるのではないでしょうか。
まとめ:マネタイズは「急がば回れ」プランニングが重要
今回は「広告」「サブスクリプション」のほかにデジタルメディアで収益を生む方法をご紹介しました。デジタルのマネタイズ手法は多岐にわたりますし、一定の初期投資が必要です。
事を急いてあれこれと施策を実行しても、軸と狙いがなければ投資に見合わない取り組みに終わってしまいます。自社のメディアにとって最適なビジネスプランを設計したうえで、施策を検討していただきたいと思います。
まずは、下記の現状分析から始めましょう。
並行して企業や有識者に話を聞き、事例やノウハウを収集するとよいでしょう。
私たちキメラも、デジタルメディアのマネタイズに知見のある企業の一つです。「デジタルメディアのマネタイズを検討している」「もっと詳しい話を聞きたい」という企業様は、ぜひお気軽にキメラまでお問い合わせください。
今回のブログは以上です!
少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。
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