初めまして。株式会社キメラと申します。
私たちは出版社・新聞社・放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。2019年1月に活動を始めたスタートアップ企業ながら、国内19社・51媒体のメディアビジネスをご支援しております(2020年10月時点)。
私たちのパートナーであるパブリッシャーは、今まさに苦況に立たされており、「日本のメディアビジネスが衰退しつつある」という論調さえあります。キメラはこうした現状を憂うメディアの方々と並走し、変革のご支援をしています。
今回のブログでは、そんな私たちキメラの立場から、昨今の「メディアビジネス衰退論」を考えてみたいと思います。
目次
- メディア衰退の本質は「デジタル化の遅れ」「読者離れ」ではない
- (1)デジタルシフトへの遅れ:デジタルメディアへの移行が遅れ、読者を取りこぼしている
- (2)広告収益の減衰:既存メディアの広告収入減に対し、デジタルメディアの収益化が追いついていない
- 真の危機は「人材・知見の不足」「広告掲載が前提のメディア設計」
- (1)デジタルシフトへの遅れ
- (2)広告収益の減衰
- (3)読者のメディア離れ
- パブリッシャーが危機と戦うために。キメラは何をするのか
- メディアパートナー事業:ビジネス課題の解決支援
- 代理店事業:記事コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat」の販売、導入支援
- 株式会社キメラへのお問い合わせ
- ニュースレターを発行しています
メディア衰退の本質は「デジタル化の遅れ」「読者離れ」ではない
そもそも「メディアビジネスが衰退している」と言われるのはどうしてでしょうか。一般には以下の3つの理由が挙げられることが多いようです。
(1)デジタルシフトへの遅れ:デジタルメディアへの移行が遅れ、読者を取りこぼしている
2018年の調査によると、日本に現存する紙媒体は1860ある一方で、新聞社・出版社が運営するwebニュースサイトは1058にとどまっています。(株式会社内外切抜通信社の調査より)
(2)広告収益の減衰:既存メディアの広告収入減に対し、デジタルメディアの収益化が追いついていない
2018年の「日本の広告費」によれば、マスコミ4媒体由来のデジタルメディア広告費はわずか582億円。これは紙媒体の広告費が2.7兆円超であることを踏まえると、微々たるものです。
(3)読者のデジタルメディア離れ:コンテンツに対する信頼低下オックスフォード大学 ロイタージャーナリズム研究所の「Digital News Report2019」によると、日本におけるニュースの信頼度は39%で、調査対象の38カ国中25位と低いことがわかります。
確かに、これらは事実ですが、あくまでも結果論です。
こうした肝心な疑問には触れていません。
では、問題の本質は何なのでしょうか?
真の危機は「人材・知見の不足」「広告掲載が前提のメディア設計」
現場の方々の声や海外事例を踏まえ、私たちは潜在的な「メディア衰退の理由」を以下のように分析します。
(1)デジタルシフトへの遅れ
内外切抜通信社の調査によれば、2018年時点で国内には4000を超えるwebニュースサイトが存在しており、そのうち新聞社・出版社が運営するニュースサイトは全体の26.3%にとどまります。
これはつまり、他業界からマーケティングの手段としてメディアに参入してきている事例が増えてきていることを意味します。純粋にメディアを主力ビジネスとしているパブリッシャーは、収益減によってリソースが逼迫する中で、デジタル人材の獲得を他業界と争っているのです。
こうした焦りは世界共通です。DIGIDAY UKの記事では、こうした焦りを象徴するような海外パブリッシャーの声を紹介しています。
「テック企業との競争によって、テクノロジー、プロダクト、デザインの専門人材を採用することはどんどん難しくなっている。私たちはこんなに色々なことをする中で、一体どうやって優先順位をつけながらリソースをやりくりすればいいんだ?」“It is getting harder to recruit tech, product and design talent due to the competition with tech companies. How do we manage resources and priorities when we are doing so many different things?”
(2)広告収益の減衰
ほぼすべてのデジタルメディアが、収入源として広告(バナー広告、記事広告)を挙げるのではないでしょうか。確かに「日本の広告費」ではインターネット広告費の増加が見て取れますが、パブリッシャーがその恩恵を受け続けられるとも限りません。
2015年の調査によると、海外パブリッシャーの40%が「デジタル広告の収入が減少傾向」もしくは「横ばい」と回答したとのデータがあります。4年前の情報ではありますが、日本にも同様の停滞が訪れる(あるいは、既に起こっている)可能性は十分にありえるでしょう。
また、スポンサー企業の記事を制作する「記事広告」を収益源とするデジタルメディアも存在しますが、案件ごとに企画・制作・ディレクションの手間が発生するため、労働集約的なビジネスにならざるを得ません。メディアのブランドを損ねたり、記事広告を内部制作する場合は業務を圧迫したりするリスクもあります。
このように広告に頼らない収益源を確保する必要がある一方、新たな事業モデルを生み出すためのノウハウが不足しているのが現状です。
(3)読者のメディア離れ
最後の論点である「デジタルメディアが読者の信頼を得られないのはなぜか」という問いについても考えてみましょう。私たちは、その理由の一つが、ユーザーに広告を見せることを大前提としたメディア設計にあると考えます。
- クリックを誘う誇大なタイトル(=“釣りタイトル”)
- 記事の読みやすさを損なう多数の広告バナー掲載
- ページビュー数や広告掲載回数を増やすためのページ分割
- ファクトチェックに時間をかけられないまま記事を量産する
こうしたデジタルメディアにありがちな特徴は、ページビュー数を増やすことで広告収入を増加させるための定石として知られています。ですが、こうしたユーザービリティを損なう手法が読者に支持されるわけがありません。
実際に『TIME』の記事によると、本文中にネイティブアドを掲載したコンテンツを最後までスクロールした読者はわずか24%と、通常コンテンツの70%に比べて大幅に減少することが分かっています。実際に広告をクリックしているのであれば広告効果があると考えられますが、単に離脱を招いている可能性も否めません。また、記事が読了されないという点ではメディアに対するユーザーのエンゲージメントが下がっているといえます。
5年前の記事ですが、メディアの広告掲載の方法に大きな変化がないので、広告と読者エンゲージメントのバランスをとる難しさを物語る資料として参考になるでしょう。
とはいえ、メディアの運営が広告収入で成り立つ以上、記事の評価はページビューに偏らざるをえません。通常のアクセス解析ツールでは、こうした読者のエンゲージメントを測定することは非常に困難です。このような現状からユーザビリティに対する指摘はあくまで定性的な評価にとどまってしまい、ページビューを追いかけていたらユーザーの心は離れていた……という事態に陥りかねないのです。
パブリッシャーが危機と戦うために。キメラは何をするのか
ここまで「メディア衰退論」に対するよくあるコメントと、その背後にある原因を考察してきました。
では、パブリッシャーが危機と戦うために、何が必要なのでしょうか?答えは3つです。
キメラはパブリッシャーの方々とともに、上記の3つに取り組んでいます。最後に改めて、私たちがどんなことをしている会社なのか紹介させてください。
株式会社キメラは、以下を事業として実施しています。
パブリッシャーの現場がビジネス課題に向き合うにあたり、必要な事業設計のノウハウやソリューションを提供しています。現在提供しているのは以下のサービスです。
メディアパートナー事業:ビジネス課題の解決支援
デジタルメディアの集客・収益化、サブスクリプションモデルの構築、社内の体制構築など、パブリッシャーが直面しているメディアビジネスの課題に対し、オーダーメイドで戦略策定・実行を支援します。
代理店事業:記事コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat」の販売、導入支援
Chartbeat(チャートビート)は、記事に対する反響や、メディアに訪問するユーザーの属性をリアルタイムで把握できる分析ツールです。ページビューという指標にとらわれず、ユーザーから本当に支持されているコンテンツを可視化できます。
私たちキメラは、時代を動かし、カルチャーを築いてきたパブリッシャーの方々を深くリスペクトしています。時代が変わっても、真摯な想いでコンテンツに向き合う方々がビジネスとして報われる世界を作っていきたいと思っています。
株式会社キメラへのお問い合わせ
私たちキメラは、デジタルメディアの事業・組織設計やデータ分析をご支援している企業です。「デジタルメディアのマネタイズを検討している」「もっと詳しい話を聞きたい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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2019/08/09 初版 2019/10/24 サービス内容変更・加筆 2020/03/02 サービス内容変更 2020/06/17 加筆 2020/10/28 加筆