こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。
広告掲載収益だけに頼るビジネスモデルからの転換を迫られる中で、デジタルメディアのサブスクリプション化(=サブスクリプション:有料購読課金化)の期待は日増しに高まっています。しかし、サブスクリプションビジネスは、始めた瞬間に莫大な利益が生まれる「魔法のソリューション」ではありません。メディアのサブスクリプションを成功させるためには、「ある指標」を把握することが欠かせません。また、この指標は、多くのメディアにおいて現状の主な収益源となっている広告パフォーマンスをも大きく左右します。
そんな超重要な指標とは、何なのでしょうか? ページビュー数でも、ユニークブラウザ数でも、直帰率でもありません。答えは「読者ロイヤルティ」です。
今回はその定義や効果、そしてあなたのメディアの「読者ロイヤルティ」をチェックできる簡単なテストを紹介します。
目次
- 「読者ロイヤルティ」はメディアの愛着・ブランドを測る指標
- ロイヤルティの高い読者はサブスクリプション契約の可能性が高い「お得意様」
- ページビューの過半数は12%の熱心な読者が稼いでいる
- あなたのメディアの「読者ロイヤルティ」、把握できていますか?
「読者ロイヤルティ」はメディアの愛着・ブランドを測る指標
そもそも「読者ロイヤルティ」とは、一体どのような指標なのでしょうか?「読者ロイヤルティ」は、「loyalty=忠誠心」と訳す通り、あるメディアに対して読者がどれほど愛着を抱いていたり、ブランドを認知したりしているかを示すものです。具体的には、以下のようなデータをもとに複合的に測ります。
- 訪問頻度
- 1回の訪問あたりの閲覧記事数
- トップページへのアクセス数
- ブックマーク経由等の直接流入
- メディア名を指名した検索流入
特に訪問頻度は多くのアクセス解析ツールで「読者ロイヤルティ」のベンチマークとされています。各種ツールの判定基準によると「2〜3日に1回以上の訪問」がロイヤルティの高い読者の目安になっているようです。
では、この「読者ロイヤルティ」を把握するとどのようなメリットがあるのでしょう?
ロイヤルティの高い読者はサブスクリプション契約の可能性が高い「お得意様」
読者ロイヤルティを高めることはメディアの収益化に貢献する「お得意様」を増やすことにつながります。ロイヤルティの高い読者は、サブスクリプションと広告のどちらに対しても高い収益効果を得られることがわかっているのです。
まずサブスクリプションについて。デジタルメディアのサブスクリプションは、メディアに訪れた読者に対して「有料購読をしませんか?」とオファーを出します。つまり自社の商品を営業しているわけですが、このオファーを出す(=営業をする)タイミングが非常に重要です。
たとえば、レストランで飲む高級ワインを想像してみてください。同じお酒でも初めて入った店では尻込みしてしまうのに、何度も訪れたことのある馴染みの店で勧められるとつい飲んでみたくなりませんか?
メディアのサブスクリプションも同じです。たまたまサイトに訪れた読者にいきなり購読を迫るのではなく、まずは再訪問を促しファンにしたうえで購読を勧めることでサブスクリプションの契約率を上げられるのです。
商品の購買に至るまでの読者の行動には段階があります(マーケティング用語でいうところの「ファネル」です)。同じ商品でもロイヤルティの高い状態で営業されるほうが成約率が高まります。
ページビューの過半数は12%の熱心な読者が稼いでいる
ロイヤルティの高い読者は広告収益――つまり、ページビューの獲得にも貢献してくれます。
大前提として「世の中のコンテンツの大半は読まれていない」というショッキングなデータがあります。Chartbeat社の調査によると、メディアに訪れた読者の45%がページに15秒以上とどまらずに離脱しており(=記事が読まれていない)、60%以上の読者はそのメディアへ1週間以内に再訪問しない(=過半数が二度と戻ってこない「一見さん」)ことがわかっています。
そんな状況下で、メディアに愛着を持って何度も記事を読んでくれる読者がどれほど貴重かおわかりいただけるでしょうか。
パブリッシャー向けにサブスクリプションツールを提供しているPiano社のデータによると、メディアの読者のうち頻繁に再訪問する――「読者ロイヤルティ」が高い読者の割合はわずか12%であるといいます。しかし、この12%のロイヤルティが高い読者によって、メディアの全ページビューのうち55%が占められていることも明らかになっています。
つまり、ロイヤルティの高い読者はページビューの獲得効率が高いのです。読者ロイヤルティを育てることが広告収益の増加にもつながる……というわけです。
あなたのメディアの「読者ロイヤルティ」、把握できていますか?
ここまで「読者ロイヤルティ」という指標の内容と、その重要性をお伝えしてきました。
この大切な指標をどうやって測定し、育てていけばいいのでしょうか?まずは、あなたのメディアが「読者ロイヤルティ」を測定できる状態にあるかどうかを簡単にチェックしてみましょう。以下の3つの質問に「YES」か「NO」でお答えください。
一つでも「NO」があてはまったら、黄色信号です。Q1.とQ2が「NO」なら、メディアの分析体制が十分に整っていない可能性があります。Q3.が「NO」なら、測定したデータを改善アクションに落とし込めていないのかもしれません。冒頭で定義をご紹介したように「読者ロイヤルティ」は、ページビュー・ユニークブラウザ数・新規訪問率・再訪問率・直帰率といった、よく聞く単一の指標さえ追いかけていればよいわけではありません。
「読者ロイヤルティ」を把握し、日々のメディア改善に生かしてくためには、社内のデータアナリストやグロースハッカーとともに複数の指標をバランスよく把握・分析する体制を整えるほか、読者ロイヤルティの測定に特化した分析ツール(Chartbeatなど)を導入することが近道です。
次回は実際に「読者ロイヤルティ」を育てる具体的なハウツーを紹介します。
今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。
Akiko Nakayama
キメラは2019年1月以来、70を超える国内パブリッシャー(新聞社・出版社・放送局)でサブスクリプションの事業設計、デジタルメディアのグロース、分析体制の構築などを支援しています。
コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat」の日本総代理店としてデジタルメディアの分析支援や体制づくりに取り組む一方、2021年には自社開発したサブスクリプション管理プラットフォーム「AE」を通してパブリッシャーのサブスクリプションビジネス開発を支援。2024年9月からはソーシャル動画の横断分析ツール「Tubular」の導入と分析の支援を開始。
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