コミュニティドリブンで形成/成長していくメディア
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コミュニティドリブンで形成/成長していくメディア

Ximera Media Next Trends #5

Jan 26, 2021 12:40 PM (GMT+9)

はじめに

メディア・パブリッシャーが知っておきたい、次のトレンドについて掘り下げていくマガジン「Ximera MEDIA NEXT TRENDS」の第5回となる今回は、コミュニティドリブンで形成、成長していくメディアについて現状のトレンドを見ながら、未来を考えていきたいと思います。

近年のD2Cムーブメントが代表するように、まず特定の世代に対して特定の商品を作り込んで提供し、熱狂的なファンを獲得、その上でそのブランドとコミュニティを両輪で回していくことで成長する事例がよく見られます。あらゆるものが溢れている現代では、よりニッチで熱狂を生み出すものが求められているのです。

この流れはD2Cブランドだけにとどまらず、メディア界隈でも類似した動きが起こっており、コミュニティが求めるものを提供していく重要性がますます高まっています。

本稿ではコミュニティドリブンでビジネスを行っているメディアから、(1)アンバサダー型、(2) プロフェッショナル型、(3) ファンクラブ型 の3パターンを取り上げます。それぞれの特徴を見ていくことで、コミュニティドリブンなメディアがどうあるべきか考えていきます。

アンバサダー型コミュニティ

1つ目としてアンバサダー(友人や知人に積極的にプロダクトを紹介してくれる人)を中心にしたコミュニティ作りによる成長を遂げたメディアをとりあげます。

ミレニアル世代のビジネスマンをターゲットに月〜土に配信する週6回のビジネニュースレターを提供するMorning Brewは、2017年には10万人だった登録者を18ヶ月後には150万人まで押し上げ、売上も1年で1000万ドル(約10億円)あげるニュースレターとなりました。特にMorning Brewのアンバサダーによるリファーラル(招待)プログラムは大きな成果をあげており、ニュースレター登録者の30%の獲得に寄与しています。またMorning Brewのe-mailでのリファーラル経由でのランディングページからSign-upまでのコンバージョン率は実に75%と、e-mail以外での媒体経由でのリファーラルに比べ35%も高く、e-mail経由でのユーザ獲得の強さを物語っています。

当然ながらリファーラルプログラムを整備すればグロースが自動的についてくるわけではありません。プロダクトがマーケットフィットしていることを前提に、アンバサダーによるリファーラルプログラムを中心としたコミュニティを作りあげることでそれが成長ドライバーとなります。Morning Brewのリファーラルプログラムの特徴は友人に紹介してSignupさせるリファーラルが行われれば行われるほど紹介者のリワードが段階的に良くなっていくマイルストーン型(もしくはTiered型)となっていることです。

画像出典: 
画像出典: MISSION.ORG

上記のリワード設計には読者からの声を拾い上げることはもちろんですが、Morning Brew Insiderと呼ばれるユーザコミュニティでのディスカッションや投票内容も吸い上げた上でリワードを決めています。ユーザコミュニティには10人のリファーラルを行うとはじめて入会することができる設計になっており、コミュニティに参加すること自体もリワード化されています。このユーザコミュニティは1万人のメンバーで構成されており、Morning Brewで共有された最新ニュース、トレンド、イベントなどの議論で盛り上がる場が形成されています。これは、ブランドへのエンゲージメントが高く積極的にユーザ獲得に協力してくれるコミュニティに他なりません。

また、Tシャツ、セーターなどのグッズリワードについては、品質に徹底的にこだわることでユーザのブランドへのロイヤリティを高めるとともに、Tシャツそのものの品質に満足してもらうことでユーザが生活の中でグッズを身につけ、ユーザ自身が歩く広告塔化することをうまく仕掛けています。

Morning Brewのリファーラルやリワードの仕組みは、単に友達紹介キャンペーンといったものではなく、非常に巧みに設計されています。これによってユーザコミュニティが活性化され満足度が向上する上、パブリッシャー側には低いCPAでのユーザ獲得も実現することが可能になります。

プロフェッショナル型コミュニティ

2つ目のパターンは、プロフェッショナル型のコミュニティです。これは特定の分野でのプロフェッショナル同士が構成するコミュニティです。たとえばフリーランスライターのコミュニティであるStudy Hall有料のニュースレターとコミュニティの提供を行っています。

Study HallのThe Digestと呼ばれる有料ニュースレターは月額2ドル(約200円)で、 The New York TimesやMedium、VICEなどでフリーランサーとして執筆をしているAllegra Hobbsによるメディア業界レポート、エッセイ、インタビューなどが週1回配信されます。The Digestには2021年1月現在で4500人以上の登録者がいます。

Study Hallの課金モデルはいくつか段階があります。The Digestに加えてジョブリスティングやフェローシップなどの案内、ライティングノウハウやジャーナリズムに関する戦略やFAQといった学習コンテンツも受けられるStudy Hall Listservという一つ上のプランは月額4ドル(約400円)、Listserveに加えてSlack上のプライベートコミュニティへの参加、400人以上の編集者と文献のデータベースへのアクセス権が付与されるStudy Hall Networkと呼ばれるより上位のプランが月額11ドル(約1100円)で提供されています。Study Hall Networkは特にフリーランスライターが効率的に技能、職探し、人脈を形成していくことに役立っており、特定分野でのプロフェッショナル型コミュニティを形成することに成功しています。

Study Hallは、メディア業界の出来事をデイリーベースでニュースレター配信を行うDeez Link、Podcast業界に関する分析や見解などを配信するHot Podと協力関係を結んでおり、合計3万5000人のサブスク登録者に対してスポンサー広告のネットワークを運用しています。ここで興味深いのは、広告主としてSubstackのニュースレター配信を行っている個人ライターのJudd Legumや、トークンベースのリワードが受け取れるコミュニティ型ソーシャルメディアのVoice.comなどが広告主となっていることです。3社の広告ネットワークでのユーザ属性は、ニューヨーク近郊のミレニアル世代のメディア業界人が主なセグメントであり、ローカルかつ専門領域に特化したコミュニティで、関係の深いメディアや業界人が広告を打つことで相互に業界を活発化している点は、コミュニティドリブンなメディアが付加的に生み出している価値に思えます。

ファンクラブ型コミュニティ

3つ目のパターンは、ファンクラブ型です。これは一番分かりやすいと思いますが、いわゆるインフルエンサーやセレブリティがファンに対して提供するコミュニティです。古くはアイドルやアーティストなどがファンクラブ会員向けの月報や限定チケットやグッズなどを販売する場として機能していきました。近年ではインフルエンサーなどの個人が誰でもファンコミュニティを運営できるプラットフォームが出てきています。

例えばUSのスタートアップであるSubifyはYouTuberのLogan Paul(登録者数2270万人)やNELK(登録者数617万人)のファンクラブサイトのバックエンドを担っています。Logan PaulのファンクラブであるMaverick Clubでは月額19.95ドル(約2000円)のサブスクリプションに加入にすることで、VIP会員となり、独占コンテンツ、公式グッズの15%割引、無料配送、ファンクラブ限定グッズ、毎月誰かに1万ドル(約100万円)をプレゼント、Logan PaulとのZoomコール(毎週)、Logan Paulチームとのディナーといった様々な特典を受けれるようになります。

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Subifyはこうしたインフルエンサーのコミュニティ形成をサポートしており、ファン醸成に関する専門家のアサイン、マーケティング協力、マネタイズ支援など行うことで、実行面の支援を行っています。

新興のD2Cブランドやインフルエンサーは、オリジナルのビジネスはもちろんですが、広告、物販、ファンクラブなど収入源を多角化しており、リスクヘッジを行っています。その中でファンコミュニティの形成とブランドを強めることで、新たなプロダクトのテストやロンチもやりやすくなるため、今後さらにコミュニティの重要性が高まることが考えられます。

おわりに

こうしたコミュニティ形成で共通することは、いずれも上辺だけの取り繕った関係性ではなく、ユーザが積極的にブランドを支持してくれるような相互の関係性を作り上げていることです。それをファンからの自発的な動きだけではなく、リワード設計やコミュニティ運営を提供側がリードしていくことで、より理想的な状態へもっていけることが今回ご紹介した例から分かります。

こうした動きは、Passion Economyの概念や、SDGsの概念ともつながってくる話で、あらゆる活動をビジネス的にも環境的にも持続可能に行えるよう、今後ますます個人や企業がコミュニティをうまく形成していくことが求められます

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