情報が溢れる世界でだれもが身につけたい技術
By キメラ|Ximera Media Next Trends #23| @November 9, 2021
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はじめに
メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズXimera Media Next Trendsの第23回となる今回は「Good Input UX(素晴らしい「情報インプット」の体験)」を取り上げます。
本、ネット記事、ニュースレター、Twitterなどさまざまな媒体を介して誰もがコンテンツを読んで情報をインプットしています。現代は電子書籍も含むインターネット上のコンテンツの量は爆発的に増え、明らかな情報過多になっています。そんななか、各人が効率的に情報インプットを行い、読む行為を通じて自分の次のアクションに役立つよう記憶するプロセスが非常に重要となっています。そのプロセスを本記事では「Good Input UX」と定義し、その実現に取り組むスタートアップを紹介したいと思います。
間隔反復で読書後体験を向上する: Readwise
気になる記事や本の一部に付箋を挟む、マーカーを引く、お気に入り登録する、多くの方がこのような方法で記憶の定着をはかったり、あとで読み返したときに重要な点がすぐわかるようにしているかと思います。今ではKindle、iBook、Instapaperなどのツールを使って、電子的にそうしたハイライトをすることができるようになっています。ですが、忙しい日々の中でハイライトした箇所を思い返すことはめったになく、いつのまにかハイライトした本や記事のことを忘れてしまっていないでしょうか。これではせっかくハイライトしたにも関わらず、学習の機会損失を起こしてしまっています。
この問題に対して有効なアプローチとされているのが、Spaced Repentition(間隔反復、または分散学習)と呼ばれる方法です。Spaced Repentitionは、学習から復習までの間隔を延ばしていくことによりその効果を高める学習方法です。勉強ではテストなどがあるため無意識的に間隔反復が行われていますが、一般的な読書ではそうした機会があるわけではないため一度読んだっきりで内容を忘れてしまうことも多いでしょう。こうした読書体験で起こる問題に対して、Spaced Repentitionの考え方を使ってハイライトを思い起こさせてくれるソリューションを提供するのがReadwiseです。
ReadwiseはAmazon Kindle、iBooks、Twitter、Instapaperとのアカウント連携をすることによって、電子書籍や記事に引いたハイライト、Likeやお気に入り登録したTweetをしばらく時期をおいてPush通知やe-mailで教えてくれます。数冊ならまだしも、数十冊の本を読んでハイライトを思い起こすのはマニュアル管理ではほぼ不可能です。しかし、Readwiseはそれをすべて任せることができるため、読了後の学習効果を確実に高めることができるソリューションとなっています。
Readwiseを使うことで、今までどおり何も考えずハイライトをつけておけばOKという読書時の安心感と、あとからインプットを定着させるプッシュをおまかせできる体験を得られます。
Readwiseは30日間無料で使うことができます。以後はハイライトの管理・通知を受け取れるReadwise Liteで4.99ドル/月(年前払いすると4.49ドル)、またはLiteプランに加えタグ付け・外部サービスへのExport・ベータ機能などへアクセスできるReadwiseプラン 8.99ドル/月(年前払いすると7.99ドル)で使い続けることが可能です。
情報爆発を収束させるReaderアプリ: Matter
インターネット上には有益な情報が多量に存在しており、我々はニュースレターへの登録、SNSでフォローした人の新たな投稿のチェック、お気に入りのPodcastの視聴など、さまざまなメディアを経由して情報をインプットしています。
ニュースレターの流行やクリエイターエコノミー化が進んだ結果、メールボックスやSNSの画面はさばききれない量の情報が溢れ、ユーザは情報の海で溺れそうになっています(少なくとも筆者はそうなっています)。その情報の海のなかで自分にとって重要なものと重要でないもののが玉石混交となり、その選別だけでも大きなコストがかかっています。よほど時間があってモチベーションが高くない限り、多くのユーザが読むべきコンテンツを選別することもできず(または流れていることも気づかず)、散発的にたまたま開いた情報を読むといった状態に陥ることになります。
そんな問題を解決しようとしているのがMatterです。Matterはユーザが読むべきストーリーを一つの場所に集め、今日のインターネットにおけるCuration Readingアプリを提供しています。Matterは、1. テキスト記事・Twitterスレッド・PDFなどのWebコンテンツの集約、2. 読みたいニュースレターの選別と集約、3. 新たなライターやクリエイターの発見の大きく3つの機能を提供することで、ユーザが読むべきコンテンツの意思決定を支援してくれます。Matter上ではすべてのコンテンツが同型のフォーマットに整形しなおされ、フィード形式でコンテンツの閲覧ができるようになっています。
1.について、ストックしたい記事、Twitterスレッド、PDFなどがあればMatterアプリにシェアするだけで保存され、Matterアプリ内で整形された形で閲覧することが可能です。
2.について、GmailアドレスでSubstackなどのニュースレターに登録している場合は、Googleアカウント連携でMatterに集約したいニュースレターを選択することができます。結果としてほかのマーケティングメールや注文完了メールなどの関係ないコンテンツをすべて排除して、読み物に集中することができます。
3.について、フォローしているライター・クリエイターのフィード以外にdiscoverと呼ばれるフィードがあります。 Matterが選んだキュレーターがセレクトするエンゲージメントの高い記事が流れ、新たなライター・クリエイター・キュレータと出会う契機になっています。
またテキスト記事を自動音声で読み上げる機能もついており、Podcastで楽しむように記事を聞くことも可能です。こうした一連のInput UXを徹底的に考えられたMatterのアプリは流れてくる情報が選別され、非常に読みやすいものとなっています。上記のReadwiseとの連携も可能で、Readwiseでハイライトされ、読むべきタイミングのものがMatterアプリ上でもフィードとして流れてきます。
このようにMatterは、効率よくインプットするために、情報ソースを1つに集約した上で、フォーマット整形とディスカバリー機能でなめらかに読める体験を提供しています。
Matterは2021年10月に、さらなる成長に向けてGV(Googleのコーポレートベンチャーキャピタル )をリード投資家とする710万ドル(約7.8億円)の資金調達を実施しました。今後MatterによるInput UXの変革が期待されます。
おわりに
今回は「Good Input UX」についてとりあげました。読書、ネット記事、Twitter、ニュースレター、Podcastなど情報が溢れている現代で、いかに必要かつ重要なものを選別してインプットし、記憶に定着させていくかは、ある意味一般教養的に誰もが身につけるべき技術なように思えます。社会全体でこのような素晴らしい情報インプットの体験(= Good Input UX)が実現できれば、人間の生産性はさらに加速できるかもしれません。本記事を読んでいただいたみなさまにもGood Input UXが提供できたかわかりませんが、何かしら役に立ったと思っていただければ幸いです。
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