Z世代がハマるソーシャルコマース
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Z世代がハマるソーシャルコマース

特化した領域に深く入り込むことでZ世代から支持を得る

By キメラ|Ximera Media Next Trends #20| Sep 29, 2021

はじめに

メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズXimera Media Next Trendsの第20回となる今回は「Z世代がハマるソーシャルコマース」について紹介します。

本連載第2回でも取り上げたZ世代(米国で用いられている定義上、1997年以降に生まれた0-24歳)は、世界の人口比で35%を超え、今後の文化経済の中心世代になることが予想されています。そんなZ世代が特にハマっている購買体験の一つがソーシャルコマースです。

ソーシャルコマースは、広義にはソーシャルネットワーク上で直接商品やサービスが購入できるサービスを指します。ソーシャルコマースという言葉は2005年にYahoo!ではじめて紹介され、その後FacebookやTaoBaoなどソーシャルメディアやECサイトでそのフォーマットの原型が作られ、今や世界の様々なサービスで適用されています。Statistaのレポートではソーシャルコマース市場は2020年で4748億ドル(約52兆円)の売上規模があり、2022年には7510億ドル(約82兆円)まで伸びると予測されています。

ソーシャルコマースの中でも特に注目されているのがライブコマースで、マッキンゼーのレポートによるとライブコマース市場は2020年で1710億ドル(約18.8兆円)の規模があり、2022年には4230億ドル(約46兆円)の規模まで伸びると予測されています。TikTok、Instagram、Facebook、YouTubeと大手プラットフォームもライブコマースに次々と参入しており、競争も激化しています。

本記事ではZ世代を惹きつける「クリエイターやインフルエンサーがおすすめする商品をソーシャルフィードや動画ストリーミングの中でサイトやアプリを離れることなく購入する体験」を中心に捉えたいと思います。

Z世代が共感する古着売買ソーシャルコマース:depop

Z世代は他の世代よりもサスティナブルなファッションへの感度が高く、新たに生産される新品の服よりも、既にある古着をうまく活用することがクールに感じる層が存在します。また昨今では2000年代の文化やファッションのリバイバルにより、ビンテージ品が高値で取引され、古着そのものの価値が上がっています。

そうしたZ世代の古着の価値に目をつけたのがイギリスのスタートアップであるdepopでした。depopは主に10代後半〜20代前半に向けたソーシャルコマースプラットフォームを提供し、誰もが手軽に古着を売買できるようにしています。depopは他のC2Cのプラットフォームと同様にユーザ間取引高に対する10%を手数料としています。

Instagramライクなフィード型で買い手のアテンションを惹き付ける 画像:
Instagramライクなフィード型で買い手のアテンションを惹き付ける 画像:depopアプリ スクリーンショット(App Store)

個人が売り手となることはほとんどないInstagramショッピングと違い、depopでは誰もが買い手にも売り手にもなることができます。一方で手軽に出品できる分、競争が非常に激しくなっています。depopのコンテンツディスカバリーはInstagramのフィードを真似ているため、売り手が商品を目にするタイミングは一瞬しかありません。そのため売り手はある程度厳選した商品をキュレーションし、一貫したブランディングと一点一点の商品に対する丁寧なバックストーリーによって買い手を惹きつける必要があります。また販売する商品を継続的にポストし顧客からの質問に素早く答えること、こだわったパッケージ、Thank Youノート(日本でいうお礼状)、試供品、早い配送を提供し、他の売り手と差別化を図ることが成功の道筋とされています。

depopでは連続した4ヶ月間で下記の基準をクリアしたトップセラーを取り上げ、Depop Community Supportチームからの支援、プライベートフォーラムへの招待、アプリ内での特別なプロモーション機会や機能を提供しています(トップセラーを維持するにはさらに厳しい基準あり)。

  • 平均で20ドル(約2,200円)以上の商品を50個以上販売する、または2600ドル(約28万円)以上の売上を上げる(depopの手数料差し引き前)
  • 少なくとも平均4.5以上のユーザ評価を獲得する
  • 平均3日以内に発送する

depopで24歳のデザイナーが100万ポンド(約1.5億円)を稼いだ事例もあり、Z世代の中古ファッション市場は過熱しています。depopのユーザは2100万人を超え、その90%が26歳以下と若いコミュニティが形成されています。そのコミュニティへのアクセスをにらんでか、ハンドメイド商品のマーケットプレイスであるEtsyがdepopを2021年6 月に16億2500万ドル(約1780億円)で買収しました。両者がどのように事業シナジーを出していくかは今後の注目ですが、パンデミックを経て人々の地元や地方への愛着、中古品やハンドメイド品への関心の高まりを受けて、Etsyとdepopの事業は今後さらに支持を得られる可能性が高そうです。

エンタメとECの融合:Popshop Live

次にライブコマースの事例をとりあげます。ライブコマースプラットフォームの多くの企業は、パンデミックの影響で売上が減少しECでそれを補填しようとしている小売事業者をターゲットとしています。その中でもPopshop Liveはエンタメ要素を駆使してZ世代へ商品を販売するライブコマースプラットフォームとしてその地位を確立しつつあります。

Popshop Live内には予告動画とライブ動画の2種類が存在し、どちらでも商品の購入が可能です。ライブ動画ではチャット機能とリアクション機能が加わることで、店主と視聴者の双方向のやりとりを通じて商品の購入ができます。雷型の絵文字を画面上に飛ばすことができるリアクション機能は多くの人が使うことで画面が絵文字でいっぱいになり、盛り上がっている様子が視覚的によく分かるように設計されています。

当月に特に盛り上がったライブコマースのハイライトがまとめられる 動画:Popsho Live Youtubeアカウント

店主は動画に来てくれた人を楽しませるために、自らの商品をリアルタイムレビューしたり、ポケモンカードなどあたりはずれのある商品を試してみて、結果を視聴者とチャットで予想しあったりします。このようなソーシャルなインタラクションがライブコマースで可能になり、ユーザはこの体験を通じて店主や商品に親近感を持ち購入が促されます。

また商品を購入するだけでなく、店主に投げ銭をする、店主に何らかの行動をしてもらうなど、物理的な商品購入以外の選択肢も用意されています。筆者がみかけたとあるショップは、5ドル支払うと店主がカプセルトイをまわして、何かしらの特典が当たるくじを引けるという体験をライブ動画で提供していました。

2021年7月時点で、Popshop Liveは30日以内に8割近いユーザが再訪問して50万ドル(約5500万円)以上の流通額があがるほどエンゲージメントが高い状態を実現しており、ライブコマースビジネスの強さを感じます。レガシーなTVショッピングとは違い、ライブコマースはエンタメとECが融合したものであり、インタラクティブ性がエンゲージメントに強い影響を及ぼしていると考えられます。

Popshop Liveは2021年7月に1億ドル(110億円)の評価額で2000万ドル(約22億円)の資金調達を行いましたBenchmark(UberやTwitterなどのへの投資で有名)などトップティアのVCからの支援もあり、今後の成長が期待されています。

ライブ商品レビュー:Flip

これまでの商品購入の体験は、ユーザが接触するメディアがあちらこちらへ分断されている状態でした。例えば、最初にTwitterで好きなインフルエンサーのスキンケアに関する投稿を見て、YouTubeでスキンケアの具体的なやり方を調べ、最後にECサイトでスキンケア商品を買うといったユーザジャーニーは珍しくありません。

この購買体験におけるメディアの分断に対して、ユーザレビュー〜商品購入〜発送・アフターケアまでを1つのアプリでパッケージングして提供しているのがFlipです。Flipは特に美容とスキンケアの領域に特化したソーシャルコマースプラットフォームを提供しています。

美容/スキンケア品のレビュー動画〜購入〜配送までOne Stopで提供する 画像:
美容/スキンケア品のレビュー動画〜購入〜配送までOne Stopで提供する 画像:Flipアプリ スクリーンショット (App Store)

Flipでは会員登録後、TikTokのように動画ベースのフィードをスワイプする形で次々に化粧品やスキンケア商品のユーザレビュー動画を閲覧していきます。ユーザレビューで扱われる対象は、Flipがパートナーとして契約する化粧品/スキンケアブランドの商品となっています。

また、在庫についてはFlipが所有する2つの倉庫で管理(今後9ヶ月さらに4つの倉庫がオープンされる予定)されており、パッケージングまで含めて配送体験をFlipがコントロールしています。TikTokなどソーシャルメディアのコマースではこれを行っておらず、この点は一貫したブランディングの観点で大きな違いとなっています。

売り手を効率よく増やす手法も目も見張るものがあり、買い手がFlip上で購入した商品をレビューする動画をアップロードすることによるマネタイズを可能にしています。そのため買い手が増えれば増えるほどレビュー動画も増え、売り手やコンテンツを拡充できるループ構造がうまく設計されています。

Flipは2021年8月にStreamlined Ventures(DoorDashなどへの投資で著名なVC)がリードするシリーズAラウンドで2800万ドル(約29億円)の資金調達を行い、さらなる成長を目指しています。

おわりに

今回は「Z世代がハマるソーシャルコマース」についてとりあげました。ソーシャルコマースといえばTikTokやInstagram上で行われるライブコマースのイメージが強いと思いますが、本記事で紹介したように特化した領域やセグメントに深く入り込むことでZ世代に支持を得ているサービスが登場しています。この領域には、NTWRKShopShopsなど他にも多くのスタートアップが参入しており、競争が激化しています。

Z世代のファンとクリエイターとの関係の特徴として、友だちのような感覚をはじめとしたコミュニケーションの近さが挙げられます。例えばdepopでは、2021年のデビュー曲で一躍トップ音楽アーティストとなったOlivia RodrigoさんがDepopで彼女の服や靴を売り出しました。しかも値段は決してプレミア価格を煽るものではなく、MVで使われた靴が45ドル(オリジナルの販売価格は115ドル)で販売され、あくまで一般ユーザと同じ目線での売買がされました。これはまさにZ世代を象徴するような出来事です。

ソーシャルコマースに限らずですが、このように新たな消費者世代であるZ世代から共感を呼び、友達のような感覚でファン化することがこれまで以上に重要となっていくと考えられます。キメラでは引き続きこのような新たなメディアとファンの関係性の新たな潮流を追っていきたいと思います。

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