By Henley Worthen(原文)2024-09-25
任天堂はいかにして『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』を、3日間で全世界販売1000万本という大成功に導いたのか。その意図的かつ戦略的なアプローチの過程を、ソーシャル動画の横断分析ツール「Tubular」のデータを見ながら時系列になぞっていく。
6年もの間、期待されつづけたゲーム
『ゼルダの伝説』は、あらゆる層から絶大な支持を集めるゲームシリーズだ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(BOTW)は、7年前の2017年に登場し、瞬く間に史上最高のビデオゲームの仲間入りを果たした。
物語は各タイトルによって異なるが、プレイヤーは主人公のリンクとともに冒険の旅に出る。リンクはエルフのような若い英雄で、魔法の力を持つゼルダ姫とハイラルの地を悪から救うために戦う。その道中、プレイヤーは神秘的なファンタジーの世界を探索し、モンスターと戦ったりパズルを解いたりしながら進んでいく。熱狂的なゼルダファンは象徴的なBOTWの続編を6年という長い年月に耐えながら待ち望んだ。
世界最大のゲーム見本市のひとつであるE3 2019で、世界はBOTWの続編をはじめて目にした。しかし、それ以上の詳細が発表されるのは数年後のこと。任天堂がついにゼルダ・サーガの第2弾と、2022年に設定された正式な発売日を発表したのは、2021年のE3だった。しかし、2022年になると、ゼルダファンはまたもや予想外の展開に見舞われる。発売日が丸1年延期され、2023年5月になったのだ。
言うまでもなく、ゼルダ・プレイヤーは期待に胸を膨らませていた。
最初のトレーラー公開
2022年9月13日、ついに『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』初の公式トレーラーが公開され、ファンはこの待望のゲームをはじめて目にすることになった。Tubularのソーシャル動画分析によると、YouTubeでのゼルダ関連動画の視聴者数は8月の4090万ビューから9月には6220万ビューへと153%も増加した。
1月1日から5月12日の発売日まで、ゼルダ関連の動画のYouTubeへのアップロード数は296.85%増加した。
しかし、発売前の新作について、ゲームインフルエンサーたちはどのように動画をアップロードしていたのだろうか?
クリエイターたちは次回作のリリースを待ち望み、それが6年前の作品であるにもかかわらず(ゲームの世界で言えば古い)前作「ブレス オブ ザ ワイルド(BOTW)」のスピードランの動画をネットに溢れさせたのだ(1日でゲームをクリアしたこの動画がすでに380万ビューを記録しているように)。この驚くべきデータは、このゲームが長い時間をかけて育んできた揺るぎない熱狂と、ファンを楽しませ、時の試練に耐える能力があると証明している。
第二弾トレーラー公開
2023年2月8日、『ティアーズ オブ ザ キングダム』の発売に向けての、極めて重要な瞬間が訪れた。任天堂がゲームプレイ映像を含む第二弾トレーラーを公開したのだ。YouTubeのゼルダ関連コンテンツの月間視聴回数は、1月の8800万回から2月には1億4600万回に増加し、熱心なゼルダファンが熱狂した。
2月9日の1日あたりの再生回数は月間最多の1140万回を記録した。 実際、このトレーラーの公開は、前年を通してゼルダのコンテンツで最高の再生回数を記録。
しかし、のちまで語り継がれるリリースへの旅はまだはじまったばかりだった。
最後のトレーラー公開
その直後、任天堂は新機能や息を呑むような新エリア「空島」を公開する一連の動画を通じて、ファンにさらなる情報を提供した。この盛り上がりをさらに高めるように、任天堂は2023年4月13日(ゲーム発売の1ヶ月前)に最後のゲームトレーラーを公開。ゼルダの視聴者数は、4月のTwitchで前月の4倍以上に増加した。
視聴者数の急増は、新作のリリースに際して任天堂が意図的かつ戦略的なアプローチを取ったことによるものだと考えられる。オンラインで共有される情報と映像を入念に管理したのだ。一部のコンテンツを除いて情報をほとんど公開せず、ゲームの先行体験はごく限られたゲームインフルエンサーに留め、発売数日前までは投稿を控えた。
2019年にはじめての予告をして以降、任天堂は最終的に記録を破るであろう壮大なリリースへの期待を巧みに高めてきたのだ。任天堂は情報の流れを慎重に管理することで、『ティアーズ オブ ザ キングダム』に期待感を高めるオーラを生み出し、ファンの興奮を着実に高めてきたのだ。
そして発売日を迎えた
世界中のゲームショップの前に熱心なファンが列を作るなか、ニューヨークの直営店Nintendo New Yorkで最高峰のイベントが行われた。この場所ではゼルダの生みの親である青沼英二氏をはじめとするゲームプロデューサーが出席し、真夜中の発売という特別なイベントが開催された。店舗はゼルダをテーマにしたワンダーランドに変身し、壊れたマスターソードの展示などで飾り付けられ、ローンチ・パーティーに招待された幸運な数人のためのグッズも用意された。
記録的な大ヒット
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、発売から3日間で全世界1000万本という驚異的なセールスを記録した。この数字は、ゼルダシリーズのなかでもっとも早く売れたゲームとして、またアメリカで任天堂のゲーム史上もっとも早く売れたゲームとして、この作品の地位を確固たるものにした。ちなみに、前作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は6年間で約3000万本を売り上げている。『ティアーズ オブ ザ キングダム』は、その3分の1をわずか72時間で売り上げることに成功した。耐え難いほどの期待感を煽ることで、任天堂はこのゲームを成功へと導くことができたのだ。
ゲームソフト通常版の価格が1本70ドルであることを考えると、ざっと見積もって7億ドルの収入があることがわかる。この数字には、特別なコレクターズ・エディションや膨大な数のゼルダ・グッズによる追加収入は含まれていない。
プレイヤーたちは時間を惜しまず、ゲームプレイのコンテンツを投稿した。発売当日には、YouTubeに8,900本の動画がアップロードされた。週末もYouTubeへのアップロードは好調で、土曜日は7,500本、日曜日は6,200本だった。月曜日になり、プレイヤーたちがゼルダの神秘的な世界から現実の世界に戻らざるを得なくなると、アップロードは若干減少し、週を通して安定した。
最初の週にもっとも再生されたトップ10の動画のほとんどはゲームプレイ動画だった。@_v4lx_によるこのTikTokはアップロード初日に400万回近く視聴され、現在は610万回を超えている(原文公開時)。興味深いことに、このゲーマーはいわゆるゲームインフルエンサーではない。彼らにほとんどフォロワーはいないが、再生数は投稿と同時に急上昇した。ゲームプレイ動画のほかにも、深夜発売の列に並ぶプレイヤーや、ゼルダ仕様の限定Nintendo Switchを開封する動画など、さまざまな動画が投稿されている。
この『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、ファンが『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に夢中になった理由の多くを踏襲しており、探索できる広大なマップの大幅なアップデート、数々の新要素や新展開、新しい革新的な魔法の能力、そして多数の馴染み深いキャラクターが登場する映画のようなストーリーが特徴だ。
また、このゲームでは無限のクリエイティビティを発揮することもできる。プレイヤーたちは、無意味に長い橋を使って問題を解決する様子を撮影した動画をソーシャルメディアに投稿したり、カロック(愛らしく無害な森の生き物。友人と再会したいと助けを求めている)に残酷な仕打ちを加えている様子を投稿したりしている。
全体として、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、あらゆるコンテンツクリエイターやゲーマーに、ソーシャル上で共有するコンテンツを数多く提供している。より多くのプレイヤーがテクニックや攻略を発見するにつれ、今後しばらくの間は、ゼルダのコンテンツが次々と公開されることが予想される。もっとも愛されているゲームシリーズの1つである『ゼルダの伝説』の最新作がソーシャル上で歴史を刻んでいるのを見るのは本当におもしろい。
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