Ximera Media Next Trends #11
@May 11, 2021
はじめに
メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載Ximera Media Next Trendsの第11回となる今回は、クリエイターやコンテンツが収益を得るための仕組みとそれを提供するプラットフォームを紹介します。
クリエイターエコノミーが広がっていくなかでクリエイターの価値をビジネスに変えていくためのプラットフォームは多数出現しています。いまやクリエイターが活動を続けていくための鍵は、いかに自分に合ったプラットフォームを選択し自身のビジネスを最適化しつづける運用ができるかにかかっているといえるでしょう。
今回はそんなクリエイターのビジネスを支える収益化プラットフォームを型ごとに大きくマーケットプレイス型、メンバーシップ型、ペイウォール型の3パターンに分けて紹介します。なお本稿では広告のような間接的に得るな収益ではなく、エンドユーザからダイレクトにクリエイターへ支払いが行われるプラットフォームを主に取り上げていきます。
マーケットプレイス型
多数のコンテンツが集まる場所で自身のコンテンツを収益化できるモデルがマーケットプレイス型です。マーケットプレイス型はクリエイターが多くのユーザが集まる場所で自分のコンテンツを広くアピールでき、ユーザは広範なコンテンツから自分好みのものを選択・購入することができる場所と言えるでしょう。YouTubeやTikTokなどのソーシャルメディア、2021年5月から有料での配信が可能になるApple Podcastや追随するSpotifyもこちらに分類できるかと思います。
個人クリエイター向けのマーケットプレイスの例として、デジタルコンテンツの販売プラットフォームであるGumroadが挙げられます。Gumroadでは3Dアバター/オブジェクト、イラスト、電子書籍、映像作品、オンライン教育コースなど多岐に渡ったコンテンツが扱われています。
Gumroadは2011年に創立され、2021年4月現在までの通算で8万6000人以上のクリエイターが4億3700万ドル(約437億円)のトランザクション(Gumroad上での総取引額)を生み出しました。とくに2020年はクリエイターエコノミーの盛り上がりに加えコロナ禍の影響もあり、前年に比べ2倍となる1億4380万ドル(約144億円)の売上を生み出し、Gumroad自身は920万ドル(約9億2000万円)の売上、108万ドル(約1億円)の利益を達成しています。
ビジネスモデルとしては、月額無料プラン(売上毎の手数料5%+決済手数料 (3.5%+30センタ))、月額有料プラン(決済手数料のみ(3.5%+30セント))の2種類があります。有料プランは独自ドメイン、Gumroadロゴの排除、独自CSSカスタマイズ、HD品質の動画配信などが可能になります。料金は1年におけるユーザ数に応じて1,000人未満は10ドル/月、1,000-1,999人の場合は25ドル/月といったように自動で調整されていきます。
マーケットプレイス型は、買い切りコンテンツが多いことや多様なコンテンツが集まりユーザが目移りしやすことから、長期的なエンゲージメントという意味でユーザとの関係性はやや弱めです。そのため、記事、書籍やCGモデルなどコンテンツそのものを販売することで初期のブランド認知を獲得するフェーズに向いたプラットフォームと言えそうです。
メンバーシップ型
認知獲得後の次のフェーズとして、よりユーザとのエンゲージメントを深めるためにメンバーシップ型のプラットフォームの活用が考えられます。本稿での「メンバーシップ」はクリエイターの提供するブランド・コンテンツ・コミュニティに対してファンが金銭的・活動的支援を継続的に行ってくれるような形を指しています。
月額課金型のメンバーシップの作成・運営を支援する代表格としては、Patreonが挙げられます。Patreonはクラウドファンディングという捉え方をされることがありますが、月額課金を中心とした継続的なクリエイター支援のプラットフォームです。クリエイターがファンからもらうメンバーシップ費の5〜12%を手数料として獲得するのおがPatreonのビジネスモデル。
Patreonは全世界で20万人以上のクリエイターに利用されており、2020年には1億ドル(約1000億円)の収益を生み出しています。メディア関連でも独立系の作家、ジャーナリスト、サイエンスライターなどが、有料会員限定記事やコミュニティ記事を配信し、ファンと深いエンゲージメントを作ることに成功しています。
Patreonでは月額課金機能とともに、有料会員専用の記事コンテンツ、コミュニティ、メーリングリストなど、基本的なメンバーシップ関連機能が提供されています。しかしPatreonによるクリエイター支援はコンテンツ配信や課金に留まらず、クリエイターが労せずオリジナルグッズを製作し販売できる機能もあります。これはクリエイターがPatreonが用意するカタログから好きなグッズを選択、デザインをカスタマイズすると、そのグッズ製造と配送はすべてPatreonが行ってくれるというもの。Patreonは、どのTierのファンに対してそのグッズを提供すべきかの提案も行ってくれるため、クリエイターはファンへのリワードの価値を最大化することができます。
この物販機能は月間売上の8%を手数料として支払うPro Planでは3%の手数料追加で利用可能となり、月間売上の12%を手数料として支払うPremium Planでは追加手数料なしで利用可能です。この機能によってクリエイターはグッズ関連のビジネスが可能になるばかりか、グッズ製作や配送に係る面倒な手続きを避けクリエイティブな作業のみに集中することができます。
メンバーシップ型の支援プラットフォームは、基本的にユーザが既にお目当てのコンテンツやクリエイターを発見した状態でサイトに訪れることが想定されいるため、クリエイターは自らでマーケティングを行い、ソーシャルメディアや前項で紹介したマーケットプレイス型プラットフォームでユーザを獲得する必要があります。一方で、一度エンゲージしたユーザは提供されるコンテンツに対してのみではなく、コミュニティやグッズ、果てはクリエイターそのものへ価値を感じるようになり、より緊密な関係性を築くことが可能です。
ペイウォール型
最後に紹介するのは、既にメディアやコンテンツ資産を持つクリエイターによる最適化されたコンテンツ課金を支援するペイウォール型です。
弊社キメラはこのタイプに属しており、メディア企業を中心にペイウォール型の課金モデルの導入・運用によってマネタイズを可能にするサブスクリプション管理プラットフォーム「Ximera Ae」を提供しています。Ximera Aeは2021年3月に週刊文春 電子版で採用されローンチされました。
既存のCMSへの影響を与えず、最短1週間で既存Webサイトにコンテンツ課金ポイントを作り、運用・改善することが可能になっています。これによって大きな開発工数をかけず、既存メディア資産を活用したオーディエンスからのマネタイズを図ることができます。
海外では、スタートアップのPicoやMemberfulが既存ウェブサイトにインテグレーションする形のペイウォールを提供しています。ニュースレター、複数Tierのサブスクリプション、メーター制ペイウォール、グループサブスクリプション、ワンタイム/継続課金などのオプションに対応しています。
これらペイウォール形の支援プラットフォームはある程度のブランド認知やファンを獲得しているWebサイトのクリエイターに最適です。とくにユーザエンゲージメントの強化を行う必要があるクリエイターやメディアにとっては、サブスクを中心に今後のビジネスモデルの変化を早期にかつ低コストで実現するには、こうした支援プラットフォームをフル活用していくことが必要です。
おわりに
今回はクリエイターがソーシャルメディアやマーケットプレイス型で初期エンゲージメントを獲得、メンバーシップ型でファンとのエンゲージメントを強化、さらなるブランドエンゲージメントの強化のため自社メディアにおいて長期のファン化していく流れをご紹介しました。
クリエイターエコノミーの時代が到来し、あらゆるタイプのクリエイターやメディアをサポートするプラットフォームが多く生まれ、その相互作用でマーケットが大きくなっていると感じます。この動きによって、クリエイターの提供するコンテンツが正当に評価され、価値に対して正当に対価を得られることで、持続的なビジネスにつながるはずです。デジタルコンテンツの世界がより良くなることを願い本記事が少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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