If Journalism Has a Future, Gen Z is Writing It
2025.11.25(Arc XP/原文)
- システムに挑戦する勇気
- もはや夜6時の放送にニュースはない
- 中立は特権―真実を伝えることは義務
- 関連性を保つには革新が必要
- 脅威なのはAIではなく、AIへの抵抗
- ストーリーテリングの未来はマルチモーダルである
- ジャーナリズムに必要な変革
ジャーナリズムが衰退しているのは、人々が真実やニュースに関心を失ったからではありません。多くの報道機関が時代遅れの規範に固執し、世界が全速力で前進するなか、進化を躊躇しているからです。
これまで勇気によって支えられてきたこの分野にとって、いま最大の脅威は誤情報でもAIでもありません。組織の惰性です。亀裂をもっとも鮮明に見ている若く情熱的なジャーナリストたち ― 彼らの声に耳を傾けようとしない姿勢こそが脅威なのです。彼らは、受け継いできた旧来の仕組みが目の前で崩れ落ちていくのを目撃しています。そして、なぜ人々が伝統的なメディアから離れ、クリエイターやインフルエンサーへと流れているのかを、身をもって知っているのです。
最近、24歳の放送ジャーナリストと話しました。彼女は過去2年間、米国の中規模の放送エリアを2箇所経験してきました。燃え尽き症候群や機能不全のシステムから、物語の未来への希望まで、彼女はジャーナリズムの現状と緊急に必要とされる方向性を率直に語ります。彼女は単なる新世代の代表ではなく、一つの運動そのものを体現している存在です。Z世代はニュースルームを静かに引き継ぐためにここにいるのではなく、再構築するためにいるのです。
システムに挑戦する勇気
この物語は災害を報道したり政治スキャンダルを暴露したりする勇気だけを描いたものではありません。ジャーナリズムやその読者にもはや役立たない規範に挑戦するために必要な、より静かな勇気についての物語です。
彼女はこの分野に明確な使命を持って参加しました。声なき者に声を与えるためです。多くの同僚記者同様、彼女がこの仕事に就いたのは名声や給料のためではありません。言ってしまえば、どちらもほとんどないのですから。彼女がここにいるのは、ジャーナリズムが重要だからです。
しかし期待は重圧になります。彼女は「あまりにも頻繁にすべてをこなすことが求められている」と言います。司会を務め、取材をし、撮影し、編集し、インタビューを記録し、記事を書き、毎日スクープを追い、ソーシャルメディアで発信する。そのすべてを、低賃金で、過労状態で、容赦なく監視されながら行わねばなりません。
「生活できる賃金すら得られていなかった」。彼女はそう打ち明けました。「家賃が足りないときに親が助けてくれるのは幸運なことです。でも、多くの才能ある情熱的なジャーナリストが、単に生計が立てられないという理由で業界を去るのを見てきました」。
経済的負担は現実のものであり、厳格なスケジュール、時代遅れのツール、柔軟性を欠く社内規定がそれを悪化させます。燃え尽き症候群は深刻で、若手記者が成長する機会すら得られないうちに襲いかかることが多いのです。
もはや夜6時の放送にニュースはない
彼女はジャーナリズムの未来を、視聴者がすでにいる場所——TikTok、Instagram、YouTube、ストリーミングプラットフォーム、ポッドキャスト——に見ています。スタジオではなく、コメント欄やDM、視聴者が真の繋がりを渇望するクリエイターエコシステムのなかにあるのです。
今日、人々はもはや組織を信頼しません。個人を信頼します。
視聴者が求めるのは洗練ではなく真実味です。誰が物語を語り、なぜそれが重要で、どのように作られているのかを知りたいのです。彼女はそれを体現しています。自分の顔を出し、舞台裏の映像を共有し、視聴者を制作プロセスに招き入れるのです。
「別の場所に移っても、私についてきてくれる人たちがいます」「彼らは私を覚えていて、私を信頼してくれているんです——局ではなく、私を」
これが転換点です。信頼は透明性と一対一の関係性によって築かれます。しかし多くの旧来のニュースルームは、もはや存在しない視聴者層に向けた報道を設計しつづけ、実際に存在する視聴者層への投資を怠っています。
中立は特権―真実を伝えることは義務
彼女は世界的な危機のさなか、透明性を封じるニュースルームの方針にとくに不満を見せました。
「人々はソーシャルメディアでガザやウクライナの惨状を目にしている」「しかしテレビでは見られない。この乖離は、私たちにとっても視聴者にとっても苛立たしいことです」
メディア組織はしばしば、ジャーナリストの発言や報道内容を制限します。「契約下にある以上、一定のイメージを維持せねばなりません。ですが戦争の現実を伝えることが偏向なのでしょうか? 私はそうは思いません」。
これは党派性の問題ではなく、誠実さの問題です。Z世代はジェノサイドに「双方の立場」というアプローチを求めていません。彼らは明確さを求めます。ジャーナリストが自分たちと同じものを見て、同じ感情を抱き、これは許されないことだと恐れることなく発言することを望んでいるのです。
関連性を保つには革新が必要
現在のニュースルームのリーダーたちが若い視聴者層について理解していない点を尋ねられた彼女の答えはシンプルです。「Z世代の99%がテレビ放送を見ていないことを理解していないんです」。
多くのニュースルームのリーダーは、何年も生放送を見ていない視聴者向けに書かれたマニュアルに従ってまだ動いています。一方、彼女のような若手ジャーナリストは、ストリーミングやショート動画、アルゴリズムフィードで育った世代にサービスを提供しようとしています。
多くのニュースルームのリーダーは、異なる世代向けに書かれたマニュアルに基づいて運営を続けているのです。
「よりアクセスしやすいコンテンツが必要です」と彼女は言います。「より多くのストリーミング。絶望や悲観だけではない、人間味と希望を感じさせるストーリーがもっと必要です」。
この乖離は単なる人材の問題ではありません。繋がりの危機です。若い人材は去り、リーダーシップは現実から乖離したまま。そしてこのサイクルは続きます:停滞、分断、そして視聴者は別のところへ目を向けるのです。
脅威なのはAIではなく、AIへの抵抗
ニュースルームで今もっとも議論を呼ぶ言葉、AIです。
しかし彼女のようなジャーナリストにとって、AIは脅威ではなく命綱です。退屈な作業をなくし、真のストーリーテリングに時間を割くためのツールなのです。
「文字起こし、フォーマット調整、データ追跡など、作業を遅らせる要素は山ほどあり、AIが助けになります」。
にもかかわらず、一部のニュースルームではAIツールの使用を禁止しています。また、AIトレーニングを導入しはじめるメディア組織が増えている一方で、方針は依然として曖昧で過度に制限的です。
若手記者たちは、ニュースを書くためにAIを使いたいわけではありません。仕事をより良く行い、より多くのことを成し遂げるために使いたいのです。しかし時代遅れの方針は依然としてこれらのツールを禁止し、ジャーナリストがかつてないほど疲弊しているなかで生産性を制限しています。
ストーリーテリングの未来はマルチモーダルである
ジャーナリズムが単に生き残るだけでなく繁栄するためには、メディア組織はソーシャルコンテンツやマルチメディア・ストーリーテリングを後回しにする扱いをやめなければなりません。
再発明とは、同じ記事をプラットフォーム間でコピペすることではありません。デジタル、動画、音声、ソーシャルファーストな形式が、従来の印刷物や放送パッケージと同様に不可欠であるという根本的なストーリーテリングの再構築です。そしてそれは、明確な認識からはじまります:記事にAIナレーションを貼り付けたり、テキストから音声への変換版をアップロードしたりすることは、真のマルチメディア・ストーリーテリングではありません。
「記者はみんな毎日ソーシャルメディアでストーリーを伝えるべきです」と彼女は語ります。「ただの見出し投稿ではなく、あなたの声、あなたの顔、あなたの言葉で。それが信頼を築く方法です」
しかし、このレベルの真のエンゲージメントを達成することは、現在のワークフローではほぼ不可能です。ほとんどの記者は既に複数の役割をこなしています。編集者、ビジュアルジャーナリスト、ソーシャルプロデューサーからの一貫した支援がなければ、コンテンツの質も創造的な勢いも損なわれてしまいます。
ここにこそ、技術が変革をもたらす余地があります。AIは単一ソースから派生する二次コンテンツ(記事・動画・音声)の制作コストを削減します。ニュースルームが「手作業による制作こそが品質の唯一の道」という認識を改めれば、視聴者との繋がりを深めるスケーラブルでパーソナライズされたマルチモーダル戦略の模索がはじめられるのです。
AIの思慮深い統合とリソース配分の最適化により、ニュースルームはついにジャーナリズムの本質である「人間の創造性」を支える基盤を築くことができます。
ジャーナリズムに必要な変革
彼女が構想する新たなニュースルームの基盤は、共感、透明性、そして繋がりにある。
彼女が優先するのは:
- 洗練よりも真実味
- 中立性よりも真実
- プロセスよりも人
彼女は人間関係を重視します。ソーシャルでのストーリーテリングを日常的にします。個性を称えます。そして人々が実際にいる場所に向けてニュースをデザインします——かつていた場所ではなく。
Arc XPの関連記事
- AIと新たなトラフィック経済:パブリッシャーが知っておくべきこと
- デジタルへの新規参入から地域ニュースの有力メディアへ成長するまで: The Baltimore Banner
- 3つの基本原則:優れたトップページの読者体験の核
- メディアの未来は体験にある。Arc XP主催「Connect London」から得られる学び
Arc XP - メディアビジネスを持続可能な成長へと導くCMS
お知らせ
- キメラは12月3日に「Arc XP」を紹介するオンラインウェビナーを開催します
- キメラ、メディアビジネスを持続可能な成長へと導くCMS「Arc XP」と国内市場における戦略的パートナー契約を締結
- キメラはニュースレター「Magnet Newsletter」を配信中です