by JACK NEARY(原文)2023-08-03
パブリッシャーは常に、速報性のあるニュースと深く掘り下げた長編記事のリスクとリターンを天秤にかけなければいけません。長く書きすぎると、事実を知りたいだけの読者を失うかもしれません。一方で、書く量が少なすぎると、そのような気軽な読者を愛読者に変えられるかもしれない段落を削ることになりかねません。
このバランスを取るのが優れた編集者の役目ですが、私たちChartbeatは、そのような判断を容易にするためのデータや洞察を明らかにすることも責務の一つだと思っています。そんな精神に基づき、当社のデータ・サイエンス・チームは、文字数とエンゲージメントの関係を調査しました。
単語の量が増えるにつれて平均エンゲージ時間(平均滞在時間)がどのように変化するのか、また、編集チームがコンテンツを最適化するためにこのデータをどのように活用できるのかを探りました。調査結果の詳細は以下の通りです。
ある程度までは、語数が多いほど平均滞在時間が長くなる
この調査の実施にあたって、Chartbeatのデータサイエンティストは、2019年1月から2022年4月までに掲載された10,000語以下の数百万件の記事を分析しました。同じデータセットにはパブリッシャー・言語・文法ルールのグローバルネットワークがあるため、ただHTMLをスクレイピングしてエンゲージメント時間を計算するような単純な作業ではありませんでした。しかし、当社のチームはこの課題に取り組み、記事の長さとエンゲージメントの関係を明らかにできる、価値あるデータをお届けします。
語数ごとに平均エンゲージ時間(平均滞在時間)をプロットすると、2つの明確なパターンが浮かび上がりました:
- 0〜2,000語の間では、語数が多くなるにつれて平均エンゲージ時間が長くなる
- 4,000語を超えると、平均エンゲージ時間のばらつきも大きくなり、記事の長さに対するリターンも不確実になる
言い換えると「4,000語未満の記事であれば、長ければ長いほど高いエンゲージメントが得られる」と自信を持ってお伝えできます。しかし、4,000語を超えると、平均滞在時間の期待値は大きく変化するので「単語数に応じてエンゲージ時間が長くなる」という結論はもはや得られません。
このことは、4,000語を超えるとエンゲージメントが高まらないことを意味するわけではありませんが、それよりも、記事の公開後にどれだけページが最適化されるかのほうがパフォーマンスを左右することを意味します。また、このデータによって、あなたのメディアの記事を当社の世界平均と比較してベンチマークすることができます。
ビニング散布図を解読する
研究発表では棒グラフや折れ線グラフをよく使うので、ここで一旦立ち止まって上のグラフを説明しようと思います。何百万もの記事を1つのグラフにプロットするのではなく、ビニングされた散布図は、1つのドットによって、ある語数の全記事を平均したエンゲージ時間を表現することができます。線が交差しているドットは、その長さの記事に対するエンゲージ時間の期待値の幅を示しています。0〜2,000語では期待値のバラツキは100分の1秒であり、ドットも基本的に線と重なっています。しかし、10,000語前後では、線の幅は9秒近くまで広がっています。
例としてグラフの6,000語を見てみましょう。ドットからは、6,000語の全記事の平均エンゲージ・タイムは80秒であることが読み取れます。そして、そのドットに交差する線は、そのなかでエンゲージ時間が最も短い記事は約77秒で、最も長い記事は約83秒であることを示しています。
記事の大半は2,000語よりもはるかに少ない
2,000〜4,000語の記事は、短い記事よりエンゲージメントが高いことが明らかになりました。この範囲にある記事は、全体のどの程度の割合を占めるのでしょうか。なんと、2000語以上の記事はほとんどなく、しかも500語未満の記事が大半を占めたのです。
500語の記事の平均エンゲージ時間(平均滞在時間)は、2022年第1四半期のグローバル・エンゲージメント・ベンチマークとほぼ同じですが、500語の記事と2,000語の記事とではエンゲージ時間の差は約30秒もありました。
ロイヤルティ(訪問頻度)による語数とエンゲージメントの関係
平均エンゲージ時間(平均滞在時間)は、ロイヤルティ(訪問頻度)と強く対応する指標です。そこで、このデータを訪問者のタイプ別にも見てみました。ロイヤルティの高い読者、つまり過去16日間のうち8日以上サイトを訪問している読者の割合は、2,500語以下の記事で最も高いことがわかりました。
私たちはすでに、ロイヤルティの高い読者は1回の訪問あたりに読むページ数は多いけれど、個々の記事に費やす時間は短いことを明らかにしています。ですから、長い記事には、一見さんや再訪問の割合が高いことは不思議ではありません。
デバイスによる語数とエンゲージメントの関係
デバイス別の単語数とエンゲージメントの関係を見ると、PC・モバイルの双方で、平均エンゲージ時間のピークは全体傾向とほぼ同じ語数で起きていることがわかります。
モバイル経由のトラフィックはPCよりもページビューが多いものの、エンゲージメントに関してはPCに及びません。グラフが示すように、これは「読者がモバイルでは長い記事を読みたがらない」ということではありません。エンゲージメントを高める目的でページの最適化を行うときには、デバイスによるユーザー体験の違いに注意する必要があるということです。
調査データをコンテンツの最適化に活用する
これらの調査結果をエンゲージメントを高めるための戦略に反映するときには「最終的には、文字数ではなく、キュレーションとページの最適化がコンテンツの消費を左右する」ということを忘れないでください。これらのベンチマークは記事のパフォーマンスを診断するためのオプションであって、リアルタイムの分析と併用することで、公開前後のコンテンツをより魅力的なものにチューニングするために役立つものです。
今回の調査のキーポイントは以下の通りです:
1. 0~2,000語の範囲では、語数が増えるにつれて平均エンゲージ時間が長くなる
私たちの分析によると、4,000語付近までは、記事が長ければ長いほどエンゲージメントが高まります。もし、あなたの記事のエンゲージメントがこのベンチマークに満たない場合は、Chartbeatのヘッズアップディスプレイのようなリアルタイムに最適化を行えるツールを使えば、読者がページのどこまでスクロールしているかを可視化でき、離脱率の高い部分をテコ入れすることができます。
2. 4,000語を超えると平均エンゲージ時間のばらつきは大きくなるが、上限があるわけではない
Chartbeatが年末に公開している「最も読まれた記事」のランキングからも分かるように、ユニークな話題は、日々のニュースよりも深く長い記事を必要とすることがあります。だからといって、それらを報じることを敬遠することはありません。エンゲージメントを高めるためには、ページの最適化により注意を払う必要があります。
3.Chartbeatのネットワークに掲載される記事の大半は500語に満たない
すべての記事が2,000〜4,000語の間にぴったり収まるわけではありませんし、そうあるべきだと提案しているわけでもありません。どのような長さの記事も、コンテンツ戦略においてそれぞれの役割があり、回遊率とエンゲージメントを高めるために活用できます。例えば、ニュース速報の短い記事が検索エンジン経由で一気に読まれたときは、関連リンクを適切に配置することでトラフィックをサイト内へ回遊させ、同じ話題に関するよりエンゲージメントの高い記事へ誘導することができます。
4. エンゲージメントはあらゆるタイプのコンテンツで評価されるべきだ
「単語数が増えると平均エンゲージ時間が長くなる」と報じたこのブログ記事でさえ、総単語数はたったの1,300語ほどしかありません。もしも付加価値のあるデータや洞察がもっとあれば、記事をもっと長くしてエンゲージメントを高めたかったです。しかし、そうでない以上、この記事が公開されてから数日間はChartbeatのヒストリカル・ダッシュボードを注視し、このブログ記事がベンチマークデータと同じくらい(1分前後)の平均エンゲージ時間を生み出しているかどうかを確認しようと思います。
ロイヤルティとエンゲージメントの詳しいインサイトにご興味がおありですか? Chartbeatのデモをご利用ください。
Chartbeat(チャートビート)は世界中の何千ものパブリッシャーから信頼されている、業界をリードするエンゲージメント分析プラットフォーム。デジタルメディアのコンテンツがどう読まれたのかを分析できる。
The New York Times、The Washington Post、Netflix、CNNなど、世界70カ国・6万を超えるメディアで導入され、日本では日本総代理店として株式会社キメラがパブリッシャーへChartbeatの提供とサポートを実施している。もっと詳しく
Chartbeatの特徴
- パブリッシャーのエディトリアルメディアのために作られている
- 「どのくらい多く読まれたか」だけでなく、「どんな文脈で読まれたか」「どれほど熱心に読まれたか」を分析できる
- 瞬間的なバズや炎上によるPV増だけでなく、読者が定着しているコンテンツを発見・評価できる
- リアルタイムで読者の反応を分析することで、トップページや記事一覧を効率よく編成できる
- Google DiscoverおよびYahoo!ニュースからのリアルタイム流入計測に対応している