by Chartbeat Staff(原文)2024.04.08
ニュースレターはオンラインの雑踏をすり抜け、直接、そして有意義に読者を惹きつける価値あるツールでありつづけています。Chartbeatのブラッド・ストレッチャー(Brad Streicher)は、ニューヨークで開催されたイベント「Audiencers Festival」で、ロイターのエレイン・ピニアット(Elaine Piniat, Reuters)とニューヨーク・タイムズのマヤ・ネリア(Maya Neria, The New York Times)と対談し、ニュースレターの専門家である2人から話を聞きました。
語られたのは、編集チームとビジネスチームの橋渡し役としての役割、ニュースレターの成長とサイトのKPIとの関連付け、そして彼らの課題についてです。
まず、あなたの役割から教えていただけますか?
マヤ(ニューヨーク・タイムズ):私はメッセージングのプロダクト・ディレクターです。ここでいうメッセージングは、プッシュ型とメール型の両方を指します。私たちの仕事は、ビジネスサイドとニュースルームのメール戦略の橋渡しをすることです。
ニューヨーク・タイムズは150以上のニュースレターを発行していて、そのカテゴリーは多岐にわたります。フォーマットもさまざまです。受信箱で完結するタイプのものもあれば、サイト上のジャーナリズムとのエンゲージメントを最適化することにフォーカスしているものもあります。とくにモバイルの場合はスペースが限られるので、ニュースレターをサイトの延長として、また読者のためにサイトをパーソナライズする方法として捉えています。
エレイン(ロイター):私はロイターのニュースレター読者・収益戦略マネージャーです。エディトリアル、プロダクト、デザイン、セールス、マーケティング、データなど、ニュースレターに携わるさまざまな部署との橋渡し役を担っています。ロイターに入社した当初、ニュースレターにフルタイムで携わる社員はわたし一人でしたが、現在はこれら全部門の社員で構成される横断チームがあり、わたしの編集部門のカウンターパートとしてニュースレター編集者を置いています。
わたしが一緒に仕事をすることがもっとも多いのは編集と営業の2部門です。編集サイドでは、チームと協力してテンプレートの作成、A/Bテスト、アンケート調査とその結果のレポートなどを行っています。営業面では、プランナーやセールスの担当者と一緒に価格設定やデータ、売り込みのためのオーディエンス情報の提供などを行っています。
ロイターの目標はサステナブルビジネス、自動車、健康、法律といった分野のプロを惹きつけることです。基本的に特定のトピックを深く取材し、それをニュースレターと結びつけています。
ニュースレターの成長とサイト自体の指標をどう結びつけていますか?
マヤ(ニューヨーク・タイムズ):メールは検索経由で来たであろう読者を惹きつけるうえで、ますます大きな役割を果たしていると思います。そして、わたしたちはメールが読者の状況を変えるテコになるという点でとても成功しています。多くの分析を行い、コンバージョンとリテンションの両方を増加させることができました。それは読者をサイトに誘導するメールにも、受信箱で完結するメールにも共通しています。わたしたちは購読者が摩擦を感じないことが望ましいと考えているので、購読者限定のニュースレターはもっともプレミアム感のあるものにしています。
無料のニュースレターでは読者をサイトに誘導しようとする傾向があります。ニュースレター側のKPIについては、先行指標としてメールのクリック率を見ています。それから、週間アクティブユーザーを確認し、コンバージョンとリテンションを見ています。なのでニュースレターを発行するたび、またフォーマットのA/Bテストを行うたびに、KPIの変動を確認できますし、実際のメールによる影響を特定することができるのです。
エレイン(ロイター):ロイターの場合、わたしが入社した当初は開封率やクリック率といった表面的な指標にフォーカスしていました。それから、ニュースレターをもっと意味あるものにするために時間をかけてサイト指標に目を向けるようになりました。訪問数に対する目標を設定し、ニュースレターからサイトに遷移したユーザーからの収益を推定しています。その影響には細心の注意を払っています。クリック数と訪問数はわたしたちにとって重要です。過去2年間で、クリック数は39%、ページビューは50%増加しています。
またニュースレターの登録者は、平均的な訪問者よりもサイト上でよりアクティブであることもわかっています。サイトの滞在時間が25%長く、ユーザー1人あたりのページ数が75%多く、直帰率は低いのです。エンゲージメントや最終的なロイヤリティを測定する上で核となるこれらの指標はすべてニュースレター登録者の方が高いのです。ロイヤリティをよりよく測る術はまだ模索中ですが、ニュースレター登録者に価値があることは確かです。
ニュースレターにパーソナライゼーションを使いたいと考えているパブリッシャーに何かヒントはありますか?
マヤ(ニューヨーク・タイムズ):本当のチャンスは、読者とコンテンツをいかにマッチさせるかにあると思います。もちろん、とんでもなく手間がかかるので、1対1ではなく、1対多のパーソナライゼーションモデルを開発しています。つまり、「登録ユーザーと購読ユーザーで何が違うのか」と捉え直せば、パーソナライゼーションがもっと簡単になります。
そこで、読者をサイトに誘導することが目的ではない購読者限定のニュースレターの例に戻りますが、(購読者に向けて)サイトに誘導することが目的のニュースレターを作るのです。そして、そのメールで購読者をサイトに誘導できた記事を、ダイジェストのプレビュー版にして登録ユーザーに送るのです。これが、1対1ほど難しくないパーソナライズの方法です。
成功については話してきましたが、課題についても話せますか
エレイン(ロイター):リソースを確保するのは、時に難しいことです。ニュースレターは、他部門のチームが行っている仕事のほんの一部ですから、ニュースレターのビジョンを持っていても、期待していたような期間で実現できないこともあります。
もうひとつは、データの正確さと真実性です。開封率、クリック率、そしてもしあなたがSailThruのようなツールを使っているなら、AppleのMail Privacy Protectionやボットをフィルタリングする指標などです。その指標ってどれほど信用できます? その情報を共有するのか、いつ共有するのか。指標の裏に隠された真実を伝えて、ニュースレターに取り組んでいる人々のやる気を削ぎたくはありません。
マヤ(ニューヨーク・タイムズ):ひとつは、ビジネスニーズとユーザーニーズを把握すること、そしてどうすればそれらのニーズを一致させることができるかを考えることです。ビジネスでは、できるだけ多くの人をサイトに誘導したい場合がありますし、ニュースレターの編集者と仕事をしている場合、彼らは最高のジャーナリズムを届けたいのです。そうした緊張関係をうまく調整することが本当に重要なのです。
製品という観点でもうひとつ重要なのは、1%、2%、3%の改善をもたらす小さなA/Bテストを行うような、漸進的な改善を行うだけの世界にとらわれず、より大きく考え、より大きな、潜在的にリスクのある領域に実際に踏み込む余地をいかにして与えるかということだと思います。A/Bテストを続け、少しずつ良くしていく方がずっと簡単です。位置情報のパーソナライゼーションをサポートするインフラを構築し、文化を変える必要があると思っています。
Chartbeatの無料デモ
Chartbeatをご覧になりたい場合は無料のデモをお申し込みください。日本のみなさまにはキメラが日本語で対応致します。
Chartbeat(チャートビート)は世界中の何千ものパブリッシャーから信頼されている、業界をリードするエンゲージメント分析プラットフォーム。デジタルメディアのコンテンツがどう読まれたのかを分析できる。
The New York Times、The Washington Post、Netflix、CNNなど、世界70カ国・6万を超えるメディアで導入され、日本では日本総代理店として株式会社キメラがパブリッシャーへChartbeatの提供とサポートを実施している。もっと詳しく
Chartbeatの特徴
- パブリッシャーのエディトリアルメディアのために作られている
- 「どのくらい多く読まれたか」だけでなく、「どんな文脈で読まれたか」「どれほど熱心に読まれたか」を分析できる
- 瞬間的なバズや炎上によるPV増だけでなく、読者が定着しているコンテンツを発見・評価できる
- リアルタイムで読者の反応を分析することで、トップページや記事一覧を効率よく編成できる
- Google DiscoverおよびYahoo!ニュースからのリアルタイム流入計測に対応している
株式会社キメラ(Chartbeat日本総代理店)のトップページへ
ニュースレター
データ分析にまつわる学びや最新のリサーチはキメラが発行するニュースレター「Magnet Newsletter」でキャッチアップできます。関連ニュースの読み解き、メディア業界の次のトレンドをお届けします。
次の記事
- Googleアナリティクスを超えて: なぜパブリッシャーにリアルタイムデータが不可欠なのか
- Google Discover のトラフィックとエンゲージメントを促進するコンテンツに関するデータ
- リアルタイムダッシュボードでGoogle Discoverの計測ができるようになりました
- オーディエンスの育成:リアルタイム・インサイトの活用によるエンゲージメントとロイヤリティの向上