2021年のメディアトレンドを振り返る
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2021年のメディアトレンドを振り返る

Ximera Media Next Trends #27|Author: Ikuo Morisugi|Dec 23, 2021

メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズXimera Media Next Trendsの第27回となる今回は、年末ということでこれまでXimera Media Next Trendsで扱ってきたテーマから2021年のメディアトレンドを振り返ります。

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目次 1. メディアへの信頼とソースの変化 2. クリエイターエコノミーがさらに顕著に 3. メディアの融合と課金方法の変化 4. Web3が顕在化し新たな潮流へ

1. メディアへの信頼とソースの変化

近年メディアの信頼は大きく低下しています。Edelmanが提供するTrust Barometer 2021の調査結果で、メディアや情報ソースへの信頼度は検索エンジン、伝統的なメディア(マスメディア)、オウンドメディア、ソーシャルメディアのいずれもここ10年で最低の水準となりました。また同調査結果では全体の約6割の回答者がニュースを発信する組織やメディアを信頼できないものとして位置づけていました。

さらに近年はAI技術の進歩と思想の偏った人々によって本物と見間違うようなフェイクニュースが文章・画像・動画で次々と生成され、表面的な情報を信じることのリスクが高まりました。

こうした大手メディアやSNSへの信頼が下がるなかで、以前よりも大きく注目されたのがローカルニュースやニッチメディアです。コロナ禍で4500万MAUまで拡大したNewsBreakに代表されるように、地元特化型、カルチャー特化型、ソーシャルメディア特化型など、それぞれの特性を大きく打ち出したメディアが登場しました。人々が信頼するソースをよりローカルとニッチに探す傾向が高まったと推察されます。

2022年も引き続き、情報の提供者・受益者のどちらもがニュースの正しさとは何なのか、何を知るべきなのか、何を伝えるべきなのかを意識してプロダクトを使う/提供していくことが重要になると思われます。来年はメディアの信頼を取り戻すことを支援するスタートアップやテクノロジーの出現に期待です。

2. クリエイターエコノミーがさらに顕著に

2021年はこれまで以上にクリエイター支援ツールにリスクマネーが集まった 参考:
2021年はこれまで以上にクリエイター支援ツールにリスクマネーが集まった 参考: CB Insights

ここ数年でクリエイターの存在感は大きく増しましたが、2021年も例外ではありませんでした。Passion EconomyのサブセットであるCreator Economyが表出化し、とくにTikTokの普及たるや目をみはるものがありました。元々人気のあるセレブリティやインフルエンサーだけでなく、Z世代を中心により一般に近い人々がクリエイターとして活躍した事例も多く見られました。

文字メディア界隈ではニュースレターサービスのSubstackが大きく成長しました。そこではメディア化した一部の強いクリエイターがマイクロベンチャーファンドを立ち上げ、Solo Capitalistとして投資活動を行うなど、クリエイターのマネタイズ手段の多様化や影響力が強くなっている様子も見てとれました。

またクリエイターが継続的に活動を続けるために必要となってくる、コミュニティ運営、マネタイズ、パーソナルメディア運営などを支援する各種ツールも次々と現れ、さまざまな業界のクリエイターの利用が拡大しました。とくにDiscordは、元来のコアターゲットであったゲームのみならず、Web3、仮想通貨、投資、プロダクト開発、カンファレンスなどのコミュニティで利用されており、コミュニティ運営に欠かせない存在になってきました。

Discord登録ユーザは3.5億人(MAUは1.5億人)を超え、2020年から50%増えたと言われている 参考:
Discord登録ユーザは3.5億人(MAUは1.5億人)を超え、2020年から50%増えたと言われている 参考: influencer marketing hub

Web3の流れもあり、来年もさらにクリエイターの影響力拡大は継続すると思われます。引き続き来年もクリエイターエコノミーに注目です。

3. メディアの融合と課金方法の多様化

近年はどの企業にとってもユーザ獲得コスト(CAC)が上がってきたため、伝統的なSaaS企業やVCがメディアの買収や新たなメディアを立ち上げ、コンテンツ力を高めることでユーザを集める事例が現れました。

一方で資金力のない中小ブランドはShopifyなどを使って自前のECストアでブランディングする傍ら、分散型のネットワークを作って顧客をお互いに融通する動きも現れました。またメディアにおいても、広告フリーのネットワーク、ニュースのバンドルなどメディア間パートナーシップも生まれ、個人クリエイターのメディアでも複数クリエイター間でパートナーシップを組みバンドル化することで新たなメディアの形を作り出す事例も生まれました。

さらには、課金手段も多様化し、数十~数百円でニュース記事を購入、サブスク課金にも関わらず支援するクリエイターをユーザが選択可能、さらには仮想通貨のテクノロジーにより1円以下でも課金可能、ユーザの投げ銭(支援)行為に対して利子まで付与、といったように課金手段が多様化しました。ユーザは細かく興味のあるコンテンツを購入してポートフォリオを組むような使い方ができるようになりつつあります。

EC、VC、SaaSなどこれまで所謂メディアとは違うものとして捉えられることが多かった事業形態がメディアと融合しつつあり、前例にこだわらずユーザを惹きつけるメディア・コンテンツを作る考え方が生まれています。さらに魅力的なクリエイターやメディアの増加、課金手段の多様化により、ユーザの選択肢は圧倒的に増え、どのように取捨選択し自分にとって最適な情報ポートフォリオを組むのか非常に重要になっています(サービス提供側にとっては、可処分時間の奪い合いがさらに激化したとも言えます)。

この2つの流れは2022年もさらに加速すると思われます。既に情報爆発の状態となってしまっている方も多いと思いますが、それを整理し支援するスタートアップの登場も期待されます。

4. Web3が顕在化し新たな潮流へ

参考:
参考: Web2 vs Web3より筆者意訳を加え作成

最後にWeb3についてです。2021年前半にNFTの話題が沸騰しましたが、その後2021年後半にかけて、Web3の認知が一気に加速しました。Web3は仮想通貨をはじめとしたトークン、NFT、DAO(分散自律組織)の3つの要素が可能とする新たなインターネットの形です。GAFAをはじめとするWeb2のプラットフォーム一強に反発する形で、顔の見えない個人同士が分散自律的に集まり、コミュニティが形成され、プロジェクトが進められる事例が次々と出てきました。また昨今話題となっているメタバースにおいても基盤となってくる要素だと考えられます。

Web3はメタバースと同じく人々の期待の現れとして言葉だけが一人歩きしている面もあり、実態として何ができるのか、何の問題を解決できるのか、人々の間でより正確に認知されることが必要です。おそらく来年あたりがハイプ・サイクルで言う幻滅期のタイミングになるかと思いますが、今後成功をおさめるかどうか2022年のWeb3の動きに大注目です。

おわりに

Ximera Media Next Trendsをスタートとして約1年が過ぎましたので、本連載が扱ってきたテーマを振り返り、2021年のメディアトレンドをまとめてみました。あらためて見ると、1年で本当にさまざまなことが起こりました。今回取り上げたどのトピックも来年も継続してウォッチしておくべき話ですが、とくにWeb3の動きは近年まれに見るインターネットの新たな潮流であり、最も興味深いトレンドです。

本年の記事配信は今回で最後となります。本連載がみなさまの多少のお役に立っていましたらなによりです。来年もどうぞ株式会社キメラおよびXimera Media Next Trendsをどうぞよろしくお願いいたします。

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